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「――えー、続きましては“特待生挨拶”」
――と、進行役らしい生徒のマイクからの声を聞き恭真はビクッとする。
「きょ、恭真。行かないと」
恭真が早く席を立たずにいると、隣に座るテルが人差し指を前に突き出しながらボソッと言ってきた。
「お、おぅ」
何故恭真がこんなことになったのかは数時間前にいろいろあったからである。
なんでこんなことしなくちゃいけないんだ…。恭真は心の中で愚痴りながらもステージまで歩いていく。階段を上り中央にあるスタンドマイクのところまで行く。そして、恭真がステージに上がった途端、全校生徒たちがざわつき始めた。
「キャー!カッコイイー!!」
「イッケメーン!!」
「か、彼女いますかー!?」
「私を抱いてー!!」
「イケメン殺すっ!」
「ハアハアハアッ」
なにか危険な声が聞こえた気がするが聞こえないふりをしておく…。と、ふとステージの下をずらりと見下ろしているとひときわ目立つ人物を見つけた。そこには、車椅子に座った少女がいた。
あ、凪だ。あんなに近くにいたのか。桃もいるな。
彼女のほうをむくと目があった。すると彼女は目を細め一瞬睨むと、目を反らされた。
むぅ…。まあ、いいか。そろそろ喋り出さないとな。緊張するけど、もうしょうがねー。割り切るしかないな。よし、
「特待生、月島恭真。私は――――」
****
「――はあーっ、終わったぁー」
恭真は教室の一角にある机に突っ伏しながら疲れを露わにする。
因みに席はどこに座るかは自由らしいから恭真は真ん中の一番窓際に座っている。
「あはは、大変だったねー」
恭真の隣に座るテルが微笑を浮かべながら言う。
・・
「大変も何も何なんだあれは…」
・・
「あれは仕方ないよー。だって恭真はカッコイイもん」
「いや、そんなことないだろ…」
「ほんとだって!」
テルが身を乗り出さんばかりに言う。
「それにして――」
「イケメン君!」
恭真がテルに愚痴ろうとしたとき、突然うしろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
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