羅城門《転》

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 恭介は瞳を閉じて、眉間に皺を寄せた。  春代のことを口惜しく思う気持ちが、未だ彼の中に湧き上がってくる。  都内山麓の実家で話をする彼女の様子から、自分が察していれば、事態をまだ軽いものに留めることが出来たのではないか。 「……まあ、そう気に病むな。お前のお陰で依頼主の一命は取り留めたんだからな」 「……はい」  恭介がそう相槌を打つと、幹子は肩に溜まった疲れを吐き出すように深く嘆息した。 「まったく、私の言うこと聞かずに飛び出しおって」  幹子は糾弾する様に恭介に言う。  申し訳なく思い、同時に自分の身を彼女が案じてくれたのだと恭介は少し驚嘆する。  恭介はチラリと幹子の方を見る。  だが、幹子の鋭利な光を宿した瞳が、恭介を睨めつけていた。 「すみませんでした」  ばつが悪いといった様子で、恭介は頭を下げた。 「軽はずみな行動をしたというのは自覚出来ています。ですが、あれを見過ごすことは僕には出来ませんでした」 「まあ、そうだな……。だが、お前は後先考えずに行動をし過ぎるんだよ……。まあ、それがお前の良いところでもあり、悪しきところでもあるんだがな」  幹子は恭介の言い文を聞くと、苦笑した。
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