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エレベーターのベルの色を持たない無機質な音が鳴る。
扉が音を立てずにゆっくりと開いていった。
扉の先には、柔らかい光が照らす幅の広い廊下があり、更に、その先には病院からの景色を一望出来るガラス張りの窓が設けられている。
恭介達は、病院側が個人の為に設けている病室の区画に足を運んでいた。
エレベーターからカーペットの広がる廊下に足を踏み出すと、予想外の感触に違和感を覚え、つい足元を一瞥する。
今まで居た病棟とは雰囲気がガラリと変わるのが、恭介には手に取る様に分かった。
辺りの廊下の壁には、フローリングが採用されていた。
「幽谷さん、先程までの病室棟と大分違うんですけど、ここって……?」
「ここは病院側が特別な個人や法人の為に用意した病棟だ」
「え、それって僕等、此処に居るのも不味いんじゃないですか」
幹子の返答に、恭介は唖然とする。
「……気にするな。何でも無いんだよ」
「……ええぇえ……」
本当に何でも無いように言ってのける幹子に恭介は困惑し、思わず辺りを見渡す。
幸い周囲に警備員は居ない。
しかし、警備員どころか、患者、看護師、恭介達以外の他の訪問者の姿も見られない。
この場所自体に面会制限を掛けられているようにしか、恭介には思えなかった。
ただ、廊下の端と端に設けられている監視カメラがレンズに恭介達の姿を映すのみである。
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