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「――――心中、お察し申し上げます、本川才蔵さん」
幹子らを訝しげに見る才蔵に、幹子は強い口調で切り出した。
「私達は“奇端倶楽部”と言う者です。今回の依頼について、貴方自身に話を通すのが筋と思い此処に来た次第です」
才蔵の相貌は険しく、幹子らを睨めつけている。
厳しい、と恭介は思う。
春代の依頼や本川家の実家の現状から、才蔵が“奇端倶楽部”に対して良い印象を抱いていないのは明らかだった。
そして、奇端倶楽部の介入を拒むように春代に強いたのは、目の前の本川才蔵本人ではないか、恭介はそう考えていた。
だが、幹子は彼を“新しい依頼主”と言った。
一体、どういう意図があるのか。恭介には、彼女の考えを量りかねていた。
「……奇端倶楽部」
口を開いたのは、本川才蔵である。才蔵が、幹子の紹介を繰り返すように呟いた。
その様子に、恭介は違和感を覚えた。
「一体、何のことだ? 君たちは一体何者だ?」
「……え」
その才蔵の反応は全く予想しないものだった。
不意の出来事に、恭介は思わず、眉をひそめた。
本川才蔵は奇端倶楽部の存在を認知してはいなかったのだ。
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