羅城門《転》

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 これは一体どういうことか。  恭介の頭に疑問符が浮かんだ。 では、本川雅司を通して、春代に対して奇端倶楽部の調査を拒むように命令したのは、一体誰か。  そもそも、何故、才蔵が同じ院内で療養をしているのか。 恭介は困惑を隠せなかった。  だが、対照的に幹子は頷くと、才蔵に向かって口を開いた。 「初めまして」 「私達は、貴方の娘である春代さんのご依頼で身辺の“ある絵巻”の霊的障害を調べていた者です」 ある絵巻――、幹子がこの病室に着く前に、言うことを伏せる様に命じた、羅城門の絵巻である。 「春代が……? 霊的障害だと?」  幹子の言葉に、本川才蔵氏は驚いたように目を開き、次に思慮するように目を伏せる。  その様子は、恭介にとって見覚えのある仕草だった。  多くは「霊的障害」という言葉に眉をひそめて訝しげな視線を向けるか、もしくは、眼を伏せる。 前者は身辺に覚えのない人間、後者は覚えのある人間だ。
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