羅城門《転》

14/19
前へ
/81ページ
次へ
「奇端倶楽部、と言ったかね?」  やがて話が終わると、暫らくしてから、本川才蔵は重々しく口を開いた。 「私にもね……、君達が虚実を並べ立てていないことぐらい分かるさ。信じるよ」 「では、本川家を蝕む“呪い”のことも……?」  幹子の口から急に発せられたその言葉に、恭介は眉をひそめて驚く。だが、才蔵は幹子の意図を理解したかのように頷いた。 「呪い……」  才蔵は、言葉の感触を確かめるかのように呟く。 「――……それはもしかして、悪鬼の蔓延る門の呪い、か?」  その発言に、恭介は違和感を抱いた。   「――悪鬼の蔓延る。 それは、どういうことですか?」  悪鬼の蔓延る門とは、正しく、春代の言っていた羅城門の絵巻のことではないか。  山麓の火事に巻き込まれ、燃え上がった筈の絵巻である。  先程の話の中でも、意図的に才蔵氏には“ある絵巻”と伏せて言及したのみの筈だった。  その絵巻の話が何故、ここでいきなり才蔵の口から出てくるのか。  思わず、恭介は幹子の方を見る。 「“呪い”だよ」  不意に、幹子が恭介の質問に答える様に言った。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加