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「……君には最初から見えていたんだろう? 今の私には分かるよ」
才蔵はゆっくりと幹子の顔を見ると、彼女に向かって、力無く言う。
「はい。実は、ここに来るまでに、予想はしていました」
幹子は頷くと、才蔵の方を見詰める。
だが、その視線は、才蔵から少しだけ外され、彼の背後に向けられているようだった。
彼らの様子に、恭介にはある予感が過ぎる。
「――幽谷さん……?」
恭介は信じられないと言った様子で、幹子を見る。
今まで、幹子が才蔵の方を眉をひそめて見ていた意味が、恭介にもやっと分かった。
才蔵の病室に入った、その瞬間から、幹子には分かっていた。
才蔵の背後に憑くその怨念、康久の命を奪い、恭介が火中にて取り殺さんとした存在。
――――……羅城門の餓鬼である。
「“呪い”は未だ、存在し続けている」
幹子は忌々しそうに呟いた。
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