53人が本棚に入れています
本棚に追加
今日の引っ越しに赤星の社員たちが5人も駆けつけてくれた。
長野から運ばれてきた段ボール箱を運び入れて、赤星の荷物も少し運び入れた。
渋谷にある自宅兼会社から私物の荷物を移してきたのだ。
僕は南向きの部屋をひとつ借りた。
他の部屋はひと月前から準備が出来上がっている。
「後は、掃除してくれれば大丈夫だね。」
「了解しました。」
僕より少し年上な男性がふたり掃除を始めた。
僕は自分の段ボール箱の中身を本棚にしまい、次々にその箱を空にしていく。
「また、社長。新しい彼氏を作っちゃたんだね。」
拭き掃除をしながら女性社員がコソコソ話し始めた。
新しい彼氏……?
この状況から察するに、僕の事かな?
この内容は、古い彼氏もいるんだよね。
「今度はお医者さんらしいじゃん。」
「綺麗な顔した男だよね。」
「社長の趣味も分からんね。色々なタイプがいて。」
僕に聞こえてないと思っているのか、内容が過激になってくる。
「アメリカから帰国する度に違うんだよね。相手が……。」
「ゲイのする事は分からん。」
「社長って外見はカッコいいから、ずるいんだよね。ん?でも、前、女の人だったよね。」
「そうだ。娘がいた筈だから、バイか?人生2度美味しいって奴だね。」
「デビッド社長も、元彼だって噂だし。暴露本出したら凄い事になってたりして。」
僕は彼女たちの話に少々苛立ってくる。
また、新しい段ボール箱のガムテープを開けた。
僕はその中身を見て驚いた。
「やばっ、間違えた。」
僕は赤星の箱を開けてしまった。
しかも、段ボール箱の上にマジックで「開けるな!」と書かれていた。
慌てて箱を閉じる。
その時、一枚の写真が目に付いた。
赤星より年上の凄い身体の大きな外国人。
この男が今話していたデビッドさん?
その脇に金髪の可愛い男の子が一緒に写っていた。
日付が新しい……。
あまり気にしない様に箱をガムテープで封印した。
僕は深く深呼吸をした。
廊下にいる彼女たちのお喋りはまだ続いていた。
最初のコメントを投稿しよう!