僕らの未来の為に……第1部(1)

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「今度のドクターはどうよ。」 「中々のイケメンですな。笑うと可愛いし、何でゲイかな?」 「全くその通り。普通の男がアレじゃね。」 「だから、少子高齢化なんだよね。」 「違うでしょ。」 彼女たちはケラケラと笑っていた。 僕って、そうなの? ちゃんと大学時代は彼女が居たし……少しの間だったけど。 大学の同級生と付き合ってみたけど、何となく違和感があって勝手に自然消滅した。 彼女と話している時は良いんだけど、どうしても、あの中年オヤジが浮かんできて先に進めなかった。 こうなったら、赤星に責任を取ってもらいたい。 でも、どんな責任だ。 僕はひとりで笑ってしまった。 その時、玄関のチャイムが鳴った。 玄関から一番近い部屋にいた僕はすぐにそこへ行く。 拭き掃除をしていた彼女たちは僕が近くにいた事に驚いていてお喋りを止めた。 玄関のドアを開けるとデリバリーの制服を着た男が立っていた。 「お蕎麦をお届けにきました。」 あっ、財布か。 僕は財布を取りに部屋へ戻ろうとした。 「料金は頂いてますので、また、よろしくお願いします。」 そう言うと、僕に蕎麦を手渡して男は帰って行った。 「あっ、届いた?」 赤星が僕の後ろから声をかけてきた。 僕は蕎麦が入っているであろう袋2つを赤星に見せた。 「片付けも大分済んだから、みんなでお昼にしましょうか?」 僕はダイニングテーブルへ蕎麦を運ぶ。 朝方、近くのコンビニで買って来た飲み物を適当にテーブルへ置いた。 「社長、お昼まですみません。ご馳走になります。」 彼らはテーブルへ着いた。 「君も早く座って。」 赤星が僕を手招いて慌てて席に着いた。 「彼は森川重一君。ここの住人です。私は居候させてもらいます。立派な医者になったら、老後の面倒をみて貰おうかと思ってます。なので、皆さん、よろしくお願いします。」 みんなが一斉に僕を見た。 「森川です。よろしく。」 取り敢えず、笑った。 つうか、僕の紹介文が可笑しいだろう……。 老後の面倒って……。 そんなことを聞いた事がない。 「さあ、食べて下さい。それと、今までのお手伝いをありがとうございました。」 赤星はみんなにポチ袋を渡していた。 「帰りにいっぱい引っ掛けて頂戴ね。」 「うわっ、ありがとうございます。」 みんなは喜んで笑っていた。 赤星も楽しそうに笑っていた。
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