僕らの未来の為に……第1部(1)

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「社長、ひとつ訊いてもいいですか?」 僕の前に座っている男が話しかけてきた。 「どうぞ。」 みんなは蕎麦を食べる手を止めた。 「あの……親子ですか?」 僕は缶ビールを吹き出しそうになった。 隣で赤星は大笑いした。 「どう見ても似てないでしょ。」 また、彼らが僕を見る。 「まあ、そうですが…。」 「高校生の時に道端で拾いました。」 「拾った……?」 「ええ、こんなに立派になるとは思いませんでした。宝くじ並にラッキーでしたね。」 おい、おい、周りが困惑しているぞ。 嘘でも、もうちょっとましな嘘はつけないのか。 僕は赤星を見たら楽しそうに笑っていた。 「これでも高校生の頃はとっても可愛いかったんですよ。今はこんなになっちゃいましたけど。」 何だ今の発言は? 「そうですか?カッコいいじゃないですか?芸能人になれば良かったのに、もったいない。」 ひとりの女性がそう言った。 「その方が稼ぎが良いですかね? 今から職を変更します?」 赤星が僕を見てそう言った。 「何の話ですか?無理です。」 「ほらね。クソが付く程真面目なんですよ。つまらないでしょ。」 赤星は僕をからかって笑っていた。 皆もつられて笑っていた。 何とか誤魔化して食事が終わった。 「それでは、社長、僕らは失礼します。」 「また、明日からよろしくね。」 「ありがとうございました。」 僕らは赤星の社員たちを玄関で見送った。 「ちょっと、疲れたね。」 「ソファで寝ていれば。僕は少し荷物を整理します。」 赤星に軽く笑って部屋に入った。 僕は部屋に入り残りの段ボール箱を開けた。 最後の本を本棚に入れ終えて、僕は床に寝転がった。 窓から心地良い風が吹き込んで来る。 今日は、色々な話が聞けて僕も疲れた。 赤星の人間関係や老後の面倒。 道端で拾った? 高校生の時は可愛いかった? 極め付けがあの写真だ。 あの男が何を考えているのかさっぱり分からない。 僕はいったい何処へ行けばいいんだ。 何だか気怠い。 少し寝るか……。
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