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とうとう春樹は叫んだ。「いたぞ!」「やっぱりか!」「ブチ破れ!!」などといった乱暴な声が、扉の外から聞こえてきた。聞き慣れた声音の罵声に、耳を塞ぎたい気持ちになる。
衝撃で徐々にドアが変形を始める。現実が音を立てて壊れていくようだった。
――なんで。
――なんで、こんな事になっちまったんだ。
脚がドアを突き破ってきた。もう幾分の猶予もない。
春樹は転げるように教室の端に移動し、素早く窓を開けた。突風が理科準備室に吹き込んでくる。二階分の高さに身が竦みそうになるが、ちんたらしてはいられない。
余程悪い落ち方をしない限り、死にはしない。ここに残っていたら命が危ない。
春樹は意を決して、窓から身を投げた。
ハリウッド映画を思い出しながらがむしゃらに手足を動かし、着地に備える。不恰好だったがそれでもどうにか両足を同時に地に着け、そのまま前転して衝撃を殺す事に成功した。
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