第1話

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 目算ではかると、もう追手との距離は10メートルもなかった。  春樹は少しでも離れようとズルズルと後退する。  「おいあれ見ろ!」「なんだ!?」「誰か止めろ!!」突然追手はぴたりと足を止め、動揺したようにざわめき始めた。春樹に向けられ、そらされることのなかった視線は、今は春樹の後方にある校門に向かっている。  春樹はその視線をたどり、校門に目を向けると一台の暴走車がこちらに向かって突っ込んでくるところだった。 「今度はなんだよ!!」  まっすぐに突っ込んでくる暴走車に慌てて転がるようにして飛びのけば、春樹のいた所を車は通過し前の方にいた追手数人を派手に吹っ飛ばし壊れたかのように急停車した。  そして、停車した車の上から金色の頭がひょっこりと覗く。男は何かを探すように視線を地面に這わせたかと思うと、車の上から飛び降りた。直後に車は再び砂煙をあげながら暴走し始めた。  飛び降りた男は春樹に歩み寄り、安心したように笑った。
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