物語 - 4章 - の続き

2/39
198人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
 何度も何度も携帯の液晶を表示させ、時間と着信履歴を確認した。  目の前にある携帯の着信に気づかぬはずはないのだけれど、物思いにふけている間に見過ごしてはいないかと心配になるのだ。  そのせいか、朝満タンだったはずの充電が大分減っていた。  受付で充電器を借り、熱いコーヒーを入れて部屋に戻った。  充電をしながらストレッチをして体をほぐす。  テレビなどで、ネットカフェを住処にする者がいるのだというけれど、こんなスペースで疲れなど取れるのだろうか。  この天井の繋がった環境では、他人のイビキや歯ぎしりが丸聞こえだろう。  耳栓が必要だろうなと思った。  化粧室で顔を洗い、歯も磨き、再び映画を眺めた。  *  意外に早くその時はやってきた。  4時を過ぎたのを確認した直後だった。  何の前触れもなく、液晶に明かりが灯り、遠藤さんからの着信が表示された。  「芽衣か。そろそろ来てもらおう。刑事がウロウロしてたら、やり過ごしてから入って来い。2階に居る」  「わかりました。20分くらいで行きます」  直ぐに精算を済ませて外に出ると雨は降り続いており、まだ4時なのに早くも薄暗い。  家路に向かう学生たちの流れに逆らいながら、タクシー乗り場まで急いだ。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!