第1話

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親より先に死ぬことを逆縁という また親より先に死ぬほど親不孝はない 生前の子は本当に親思いな子であったと言えば親ばかであるがそれでも 良い子だったといいたくなる 何故神は新婚さん三ヶ月で天に召したのだ 蜜月を三月おくりて突然死子は天国に住み家ありしや 通夜客のうから輩の慰めの言葉の遠くうつろにさ迷う お通夜は 善行の教え子はじめ学校関係者、教育委員会、中には教え子の父兄まで見えて盛大なお通夜が行われた 本葬も沢山の参列を賜り質素ながら立派な昇天式を行うことが出来て善行の人徳が偲ばれる式でありました 当方は大阪から兄二人本家から甥夫婦が来ていた 後は親しい友人夫婦十人 火葬が終わるまでの二時間待合室で中食を取った 弘子のお父さんから封筒を渡されて長島教会、都城教会の牧師さんへ謝礼の お金を渡すようにいわれて代理でお礼の言葉を述べた 吾子なれど遺骨は我が手を離れ去り嫁の胸なる白き骨壷 コツ拾いの儀式が終わると弘子の一族はそれぞれの車に分乗してろくな挨拶もなく出水へと帰っていかれた なんと味気ないことよ 嫁は雅家の人ではなかった 夫が死ねば里へ帰るのが今の常識なのだろうか これから遺産のことで寂しい事になる予感がした やがてその予感は的中する事になる 茜さす白浜の細砂採取して子の仏前に線香たつる 逝きし子の遺しし品々身につけて何時も一緒と街へとでかく 鉦ひとつ鳴らして今日の無事願う頼りのおのこ「男」に先発たれし身の
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