プロローグ

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空から宇宙へ そして更にそのもっと上へ 紫色のカーテンを抜けて 虹色の扉を開けて もっともっと上へ 創造主のいる場所。 創造主には形はない。 色も香りも音も。 でもそこにいる。 そしてその場所には 数えきれないほどのダスト 「塵」が存在している。 ダストは別名「光」とも言う。 または「魂」とも。 その静寂に包まれた完璧な空間は 何物にも変え難いが 時折、創造主が息を吹きかけると ダストたちは音もなく ふわっと下へと舞い降りて行く。 そしてどこかの銀河系の星へとたどり着く。 それは、もしかしたら地球かも知れない。 例えば地球に舞い降りてきたダストたちは バラバラになりそれぞれが選んだ肉体へと宿る。 たいていは縁ある肉体を選ぶようだが もし遠く離れた場所へ舞い降りたとしても 必ずダストたちは引き寄せあうのだ。 何故ならダストは天空に存在している時から 元来くっつきあっているのが好きなのだから。 しかし、ダストは「塵」だから何物でもない。 大した役割などない。 たまたまこの地球に落ちて来ただけのこと。 けれども人間の身体にたった一粒の花粉が入っただけで くしゃみや鼻水に悩まされてしまうことがあるように たった一つのダストのせいで 地球も悩まされ大きなくしゃみをしてしまうこともある。 さて、そんなダストたちを創造主は天空から見下ろして 一体どう思っているのだろう。と思った人がいるかもしれない。 果たして、創造主は何とも思っていない。 何故ならダストはただのダストだから。 しかしながらダストたちは肉体に宿った瞬間から その生命活動につきあわなくてはならなくなる。 今までは天空でただ、存在していれば良かったものを 地上に降り、肉体を持ってしまった故の苦行が始まるのだ。 いや、苦行と言う言い方は間違っているかもしれない。 それはわくわくするような新鮮な体験だと感じるかもしれないのだから。 いずれにせよダストたちは天空での記憶を亡くし 代わりに肉体を持ち、その肉体が滅びるまでのわずかなひとときを生きる。
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