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ここにひとつのダストが存在している。
仮の名をダストA
Aは地球のとある海辺に舞い降りた。
宿った肉体は肌の白い女の子だった。
女の子の両親は暖かい風の吹く、海近くの町で暮らしていた。
Aが女の子の肉体に入った時、女の子はまだ母親のお腹の中にいた。
「魂」の記憶は胎内にいる間はまだ残っている。
この世に生まれ落ちた瞬間に多くの記憶は消えてしまうのだが
例外もある。
Aの胎内での出来事はここでは省こう。
そしてこの世に新たに出て来た時
Aは天空での記憶を忘れた。
また後に思い出すことになるのだが。
Aは幼い頃、とても愛に囲まれていた。
ここで言う愛とは両親から受ける愛。
けれども形としてこの場合は物質的な愛である。
欲しいものは言葉にする前に必ず手に入ったし
やりたいことは何でも試すことが出来た。
だから少し大きくなるまで
Aは何かを欲するという感覚感情がどういうことなのかわからなかった。
ある時、確かAが5歳の頃だったか
遠足があった。
Aのお弁当箱には、おにぎりとサンドウィッチ、いなり寿司にオムレツにから揚げ
タコ足のウインナーとイチゴにゼリー、キャンディーと言った具合に
母親の過剰な溺愛が詰まっていた。
Aがそんな両親、特に母親からの愛に溺れることなく素直に育つことが出来たのは
Aが天空での記憶を後に思い出すことが決められていたからかもしれない。
Aが12歳になった時、
両親は海辺の町から電車で小一時間ほどの町へと住まいを変えた。
Aは幼い頃からの住み慣れた土地や友人と離れ、
新たな環境に順応していく努力を強いられることになるのだった。
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