24人が本棚に入れています
本棚に追加
「真歩、何か欲しいものあるか?」
隣を歩いていた彼が、私の顔を覗きながら問う。なんだかその言い方や表情に、軽い違和感を覚えた。でも、この時はさほど気にしないでおいた。
「どうしたの、急に?」
私の誕生日、まだまだ先だよ?と続きを言おうとして、辞めた。きっと蒼君は私の産まれた日を知らない。聞いてくることがあるまで教えないつもりでいるし、示唆するような言葉もあまり言いたくなかったからだ。
そういえば、今年の蒼君への誕生日プレゼントは何にしようかな、と。己の欲しいものを聞かれているのに、そんなことを考えてみる。
「……4月、ってさ。俺達にとって記念月みたいなもんだろ」
だから、何か形に残るモンでもプレゼント出来たらいーなと思ってよ、と彼は言う。
「あら、記念日とかそういうのを気にするのは女ばかりと思っていたのに。そういうわけでもないんだね」
「これからまた、会う日も少なくなっちまいそうだから。で、何かないのか?」
「いらないよ、別に。蒼君とこうして話している時間があれば、それで」
「じゃあ、次に会う時までの宿題な。プレゼント何が欲しいか」
「えー?」
そういうのは、サプライズでくれたほうが嬉しいのに。そういうことは思いつかないのかな。でも、ホントに何もいらないんだよ。この2人の時間と、私の耳元で揺れるピンク色の輝きがあれば、それで……。
最初のコメントを投稿しよう!