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「別に」
そっぽを向いて、緩んだ口元を隠す。
「今…おまえさぁ、黒い笑いしとったぞ?」
ニヤッとしながらそう言った幼なじみは、“ん”と顎で左側を示す。
「へいへい…」
私は、ベンチの真ん中辺りから左側にずれてやる。
意外と細身の幼なじみは、空いたスペースにそれはゆったりと優雅に、腰を下ろした。
「ハナ、そんで何を見とったの?」
缶ビールを飲みながら前方を見るこの男の横顔は、昔とちっとも変わっとらん。
ほんの少し、安心する。
「ふふふ…若者たちの恋のバトルがね…」
「ああ…あいつらか」
薄い頭の幼なじみも、気づいたんだろう。
視線の先には、男の子たちが代わる代わる必死のアピールをする場面。
もう…あんなに必死にはなれんなぁ。
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