言霊

2/4
前へ
/310ページ
次へ
もし、この世界に「言霊」というものが本当に存在したら。 私はきっと、それを使って大切な人を傷つけた人々を苦しめるだろう。 私を苦しめた人々と一緒に。 それをして泣いてる人がいるとしたら、もらい泣きしてしまうでしょう。 皆は優しいから、どんなに憎い人でも苦しんでいたらきっと泣いてしまう。 こと-だま【言霊】言葉に宿っている不思議な霊威。古代、その力が働いて言葉通りの事象がもたらされると信じられた。万一三「ーのたすくる国ぞ」ー-の-さきはう-くに【言霊の幸ふ国】言霊の霊妙な働きによって幸福をもたらす国。わが国のことを指す。万五「ーと語りつぎ言ひつがひけり」 ~新村出編広辞苑第四版(岩波書店P.950より。 言霊、そんなものが本当にあったら怖いね。 きっと、法律ができてしまう。 軽々しく言葉を発しちゃいけないという法律ができてしまう。 でも、それなら幸せかも。 だって、そしたら人を傷つける言葉なんてものは存在しなくなるのだから。 皆、仲良しでいられる。 ちょっと待ってよ、私の脳が話しかけてきた。 ああ、きっとそんな法律があっても、ダメなんだ。 人には必ず生理的に無理って人とか、とにかく相性がある。 AさんとBさんが友達でも、AさんとCさんは相性悪くて、そんなCさんとBさんは友達だったりで、DさんとCさんが友達でもDさんとBさんは相性悪くて……。 そんな連鎖が私達の遺伝子を作ってくれたのだろう。 誰もが仲の良い世界なんて、あってはいけないんだ。 じゃないと、多分人は人を大切にし過ぎて絶滅してしまうから。 最初から、知ってた。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加