言霊

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「死ね」って言われた、じゃあ死のうか。 「学校来んな」って言われた、じゃあ学校行かんどこうか。 案外、言霊が本当になくてもそうやって本当になったり。 言葉に毒があったとして、その毒に侵されたらそうなってしまうの? いや、そうじゃない。 きっと、言霊があってもなくても、人は助け合い傷つけ合う。 現に言霊がないこの世界では、人が毎日私達と同じ星の中でいっぱい死んでしまっている。 息をしている左で、笑っている正面で、泣いている右で、歩いている真後ろで。 人は必死に手を伸ばして助けを求め、死んでいく。 それを今まで見て見ぬ振りをしてた人、手ぇ挙げてみて。 そこには挙がってる手なんて一つもなくて。 そして言い訳が飛び交うだけ。 こうやって自分に嘘をついてでも、近場で人が死んでしまうという事実に目隠しをしたいんだって。 もう、言霊なんかいらないじゃん。 事故? 寿命? 故意? 病死? 餓死? ……自殺? もう、イヤだ。 怖いよ、怖いよ。 私達は、一つの何気ない言葉で傷つけ、そして殺し合う。 それが肉体的にであろうが精神的にであろうが関係なく、血は流れるの。 知ってましたか。 何気ない一言で人は血を流すと。 知ってましたか。 その血を見て傷つき後悔するのは自分なのだと。 知ってましたか。 言霊がなくとも、一滴の血はパンデミックのように広がると。 自分が怖くなって、一つ一つの発言がもう嫌になって。 それでも私は会話をする。 傷つけると、傷つくと解って会話を続ける。 なんでってそりゃ、寂しいから。
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