短い前提

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0.  ゼロ。始まりは完全なる無から、というのは実はありえない。  無から有は生まれない。かつて誰かが言ったように、決して無から始まることはない。必ずしもその原因が存在する。  それは誰かが意図したからかもしれない。  それは世界が望んだからかもしれない。  それは――何かが終焉したからかもしれない。  この物語が始まるにあたっても、勿論原因が存在する。しかしそれは、ゲームのようにナンバリングするならばゼロであり、まさに番外というべき話であるからここで話すべきではない。あの成るべくして成った、変化するべくして変化した、覚醒するべくして覚醒した、あの話というのは――こういう風に伏線だけ貼って語らないで終わるのが一番良い。必ずしも語らない方がいいわけではないが、だからと言って語る必要性は俺には見出すことができない。俺にとっては、まさにデメリットしか存在しないのである。  原因は明かされず、ほのめかす表現こそ存在すれど、決して語られることはない。それが格好いいし、とても都合がいいのだ。秘密を持っている方が魅力的だ。  まあ、ぶっちゃけ、あんなものを語ったところで自分が恥ずかしいだけで、決して面白くないし、誰にもメリットを生まない。強いて言うなら、あー前日譚こんなんなんだー、まー導入解っただけいっかー、みたいなすごく下らないレベルの物なのである。あと、俺の心がヤバい。  必要あるのかと言われれば――うん?ちょっと首を縦に振れそうな気がしなくもない。  まあ、無いということでここは先に進ませてほしい。別にそれでも問題はないから。  もしかしたら、いつか、語る時が来るだろう。  そのいつかがいつかと聞かれれば、えーと、まあ、多少現実に戻ってから聞いてほしい。  ……気が向いたらね!  …………。  ……………………下手に語るとそもそも、この物語の存在意義自体が危ぶまれる。先ほど言ったように、秘密を持っている方が魅力的なのだ。
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