短い前提

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 さて、軽く咳払いをしつつ、話を変えよう。こほん。  ある種の短編小説のような出来事を終えた(という設定の)俺はなんやかんやでとってつけたような理由を持ってとある世界に侵入する。  間違えた。  侵入じゃない。ちゃんと許可を得て、潜入――でもない。ああ、普段から使わない言葉を使おうとすると咄嗟に出てこないものだな。  あ、うーん、えーと、そうだ。  迷い込んだ。  許可を得たにもかかわらず、その入場方法は、迷い込むと称するのが正しいだろう。というか、許可を得たのだから普通に入らせてほしい。何故俺が気づかぬ間に飛ばされるのか。  まあ、そういう訳で俺はいきなり迷い込んだわけである。  いつの間にか、見知らぬところに居たら、"迷い込んだ"で間違い無い筈だ。  俺の意表を突く、想定外での入り方だったが、この世界に入るのは一応は決まっていた事である。勿論狼狽えることとなるのだが――その様子は語りたくないなあ。でも、語らないと進まないしなあ。  ……無様だけど、語るしかないか。  まあ、少しだけだし、問題ないだろう。  そもそも、人間とは無様な姿を晒して成長していくのだ。恥ずかしいからこそ次はそうなるまいと努力するのだ。俺は人間はそう生き物だと思っているから、うん、何か若干語る気が出てきたような出てこないような。  やっぱり飛ばしたい。  キング・クリムゾンしたい。  わざわざ自身の痴態を晒す意味なんてないが……後々好き放題暴れられるから我慢しておこう。  一先ず、簡単なプロローグというか、前語りというか、ぶっちゃけなくてもどうということはない語りはそろそろ終わることにしよう。必要なことは言った。必要じゃないことがこの語りの9割だったようなそうでもないような気がするが――これにてゼロを終わろうと思う。  ……ん?ああ、そういえば俺がどこに迷い込んだのか、言っていなかった。我ながら本当に締まらない。しかし、まあ、これが"俺らしさ"ということで許してもらいたい。  俺が迷い込んだのは。  少し訂正、俺“達”が迷い込んだのは。  幻想郷。  人間妖怪神様、色んな幻想がいる箱庭の楽園。  さてそれでは。  第一幕、黒埼白土の幻想紀行。  開幕。
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