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「……いってえ」
「よーし、追い詰めた」
「うわ、マジかよ」
「マジだよ」
「……洒落になんねえよ」
上半身を咄嗟に持ち上げるも、既に妖女は俺の目の前、目前、宙に浮かんで此方を見ていた。
獲物を見るような、そんな目で。
やっと食事にありつける、そんな嬉々とした表情で。
しかし、決して人間が浮かべるようなものではない、凶悪な笑みを浮かべて。
「ふっふー、ご飯っ、ご飯っ」
「……やけに嬉しそうなところに水を差して悪りぃんだけど、俺を見逃してくれよ」
「やーだ」
「もうちょっと考えてくれてもいいんじゃないですかねえ?」
「もうお腹すいた仕方ないの。お腹と背中がくっ付いちゃうよ」
「今日日その表現聞かねえな……」
「それじゃあ」
ぐい、とさらに俺に近づいて、彼女は言うのだ。
待てという一言すら俺に発する暇を与えず。
「いただきます」
口を開いた。
「やめなさいって」
なんて言葉が横から飛び込み、妖女は俺の視界からいきなり消え去るのだった。真横に、左側に。辛うじてそれが分かる程度の速度で。
いやほんとに危なかった。
第一話にして完結するかと思った。
こうなったのもいきなりこっちに送られて来たからだ。
くっそ、あの胡散臭い女覚えておけよ。
「ほら、大丈夫?」
はてさて、少し思考しているうちに俺の目の前は主に赤色と白色で埋まっていた。俺の目の前には若干おかしい巫女服を着た少女が居たのである。その少女はまさに美少女という容姿で、ひゅうと口笛を吹きたくなった。まさにナイスなタイミングで現れた彼女のためならいくらでも口笛を吹いてやりたい。
俺口笛吹けないけど。
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