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――「杯と花束亭」にて――
やあいらっしゃい。見ない顔だね。
遊歴の剣士か冒険者ってとこかい? 酷い目にお遭いなすったか随分とまぁボロボロだねぇ。
この店じゃ客のナリにはうるさかないが、背中の物騒なもんは預からせてもらうぜ。
ほいっ……と、こりゃまた細長い剣だねぇ。
え? 剣じゃない? 針みたいなものだって?
……ははぁ、判った、アレだ。駆け出しが有名人にあやかろうってやつ。
“ピアッサー”・レイフォルスの真似だろ? こないだ「帰らずの迷宮」を堕としたそうじゃないか、憧れるのも判るよ。
は? 本人だって?
馬鹿言っちゃいけない。あんたみたいになよっちいのがピアッサーなら、おれなんか聖王さまだよ。
……はいはい、ムキになるなって。判ったよレイフォルスさま。とりあえずエールでいいのかい?
はいよ。つまみはちょいと待ってくれ。見ての通りの混みようでね。
ああ、そうさ。「勇気の像」。広場に飾ってあるやつだ。
何もないこの街が、あれのおかげですっかり有名になっちまってね。
商売人の立場からすりゃ嬉しいが、この街の住人としちゃ複雑な気分さ。
なに? あんた謂れを知らないのかい。
……よっしゃ、これも何かの縁だ。おれが詳しく教えてやるよ。
ああ、確かに忙しいが、構わないさ。新規の客の相手をするのも、店主の重要な仕事だからな――
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