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「勇気の像」。あんたその表情(かお)拝んで来たかい?
そう。今にも泣きそうな半笑い。勇気の名にゃあそぐわない。
けどな、あれは間違いなく勇者の姿なのさ。
この時間なら、像のそばにシスターが居たろう? 年若い美人がさ。
あの人は、実はここの領主さまの娘さんでね――そう、“華の剣”・ミシェルさまだ。
知ってるってことはあんたも剣術大会見たのかい? 去年の大会じゃ大活躍だったからなぁ。
並の男じゃ束になっても敵わない強さに加えて、おれら街のもんにも気さくに声をかけてくれる優しさ。それでもってあの美貌だろ?
この国(ファレリアス)はもちろん、“剣の帝国”・キルギランの貴族の若様、果ては“自由都市”・オーザリートのゴーレム乗り(ドールドライバー)まで。
西ファレリア中から求婚者が絶えなかったもんさ。
けど、ミシェルさまは一向に首を縦には振らなかった。惚れてる男がいたからさ。
ミシェルさまは上手く隠してるつもりだったかも知れないが、騙せたのはご自分の父上ぐらいのものさ。
そいつはアランっていってね。お屋敷に出入りの庭師の息子で、金も力もない優男――なんでそんな奴に惚れたのか仲間うちで不思議がったもんさ。
何しろアランってのはいつもオドオドしてて、気が利かなくて――まぁ庭師としちゃ腕が良くて、素直な奴なんだが――とにかく、そんな冴えないガキ……っと失礼、口が悪かったな。ファロスさまお赦しを。
……どこまで話したっけ? ああ、そうそう。とにかくあの二人は何故だか子供の頃から仲が良くってな。
そりゃ身分の違いはあるが、田舎貴族の末娘が平民に嫁ぐってのは無い話じゃなし、いずれミシェルさまがお父上を押し切っちまうだろうって、みんな噂してたもんさ。
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