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ところが、だ。
ふた月前のことさ。「ファロスの花待ち祭り」の晩に、新たな求婚者が現われた。
最低最悪のやつだ。
ダルマス。“魔術大国”・ハラルコンから来た魔導師さ。
あんたも噂を聞いたことぐらいあるだろう? 呪術が得意で、おまけに「十傑」の弟子ときた。
どこぞの貴族のドラ息子よりタチが悪いぜ。
やつは「花の舞」の準備をしているミシェルさまの前に進み出て、あの人を問い詰めた。
どうやらあいつが何度か送った手紙を、ミシェルさまは全部無視してたらしいんだな。それで業を煮やしたダルマスは、直談判に来たってわけだ。
やつは見てくれは良いが、人柄の悪さが滲み出ててな、ミシェルさまじゃなくたって結婚相手には遠慮したくなるだろうさ。
アランのこともあるし、ミシェルさまは当然突っ撥ねた。
ところが野郎は諦めない。そして、押し問答の末、無理矢理あの人に言うことをきかせることにしたのさ。
――自分の得意技でな。
ダルマスは持っていた杖を掲げると、何ごとか呟いた。
すると、なんとその杖が蛇に姿を変えやがったんだ。
止める間もあればこそ、蛇はミシェルさまの首筋に噛み付いた。
ミシェルさまはすぐさまはたき落としたが、時すでに遅し。呆然とする彼女に向けて、魔導師の野郎は宣言した。
「三日もすれば石になる呪いだが、我が妻になるなら解いてやろう」
とな。
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