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一瞬の間も空けず、ダルマスの頬が鳴った。
ミシェルさまだ。小気味のいい平手打ちだったぜ。
しかしダルマスは怯まない。嫌な笑みを浮かべると、こう言いやがった。
「三日待つ。石の像になる前に色良い返事を聞きたいものだな」
……おれたちはやつを止めることはできなかった。ミシェルさまが手出しを禁じたのもそうだが、白状しよう、みんな怖かったのさ。あの野郎に手出しをするのが。
そうして、ダルマスは去って行った。
去り際に、「せめてもの慈悲だ」と一枚の羊皮紙(かみ)を置いてな。
後には絶望だけが残された。
魔法をかじってたよろず屋んとこの三男が何とか解呪を試みたが、上手くいくわけがない。お手上げさ。
楽しい祭りの夜のハズが、すっかり葬式の雰囲気になっちまった。
羊皮紙? ああ、あれがあの野郎の性格の悪さをはっきりと物語ってたぜ。
そこに書いてあったのは、「呪歌」さ。「なりかわりの歌」だ。
つまり、身代わりに石になるやつがいればミシェルさまは助かるってわけさ! 見上げた慈悲深さだぜ。
そこからは押しつけあいさ。「歌う」のは誰でもいい。なんて書いてあるのか判らなくても歌えちまう――それが「呪歌」だからな。
いくらミシェルさまが好きでも、代わりに石になってやろうなんてやつはいやしない。情けない話だがな。
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