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その後も私が会社に残れたのは、
高野さんが必死に訴えてくれたからだ。
昔形式の小さな会社。
シングルマザーになる事を
告げると、
社長は露骨に嫌な顔をした。
やってけるの?
助けてくれる人いるの?
辞めて欲しそう、だった。
『三崎さんじゃないと仕事にならないし、
他の人いれるんなら私も辞めます』
そう言って、高野さんは
割り込んでくれた。
事務全般を牛耳る高野さんの
言葉に、
私は失職を免れたのだ。
でもそんな高野さんすら
言った。
……大丈夫なの……?
って。
ハルトが隣に女の子を乗せて死んだ、と言う事には一切触れず。
大丈夫じゃない、と答えたって、
何が変わる訳でもない。
もうおろせない月日までくると、
私は実家に。
実家と呼べるのかわからない、
母親がいる家、と言う場所に
報告しに行った。
母親は泣き崩れ、
その膝に座るまだ六歳の弟を、
何かにすがるように抱きしめていた。
父親は変わらず良い人で、
無理に父親面する事もなかった。
『……アズちゃん……
僕たちいつでも力になるから。
いつでも頼って』
そう言ってくれたけど、
それからほどなくして父親は病気になり入院した。
母親はその看病で忙しく、
ハルトとの子供を産むまでは、
高野さんと、ミウさん、
それから……
あの力丸君が助けてくれた。
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