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『……違いますよ……。
えっと……これも内緒っすよ。
そのぉ……ハルトさんって小さい頃
母親に捨てられたんですよ。
父親はどこの誰かわかんなくて、その母親が水商売しながらハルトさん育ててたらしいんですけど、
ある日どうしようもなくなってハルトさん砂浜に置き去りにしたみたいです。
ここで待っててね。すぐ戻るからねって。
……その時が調度夜明けで……
日が昇って……
五歳のハルトさん、
それをずっと見つめながら母親
が帰って来るのを待ってたらしいです。
結局母親は戻って来なくて……
ハルトさんはその後親戚中たらいまわしで……』
……えっ……もしかして泣いてる……?
力丸君の目に……光るもの。
『……そ……ぅなんだ。
あ……でもその……何で一番嫌な記憶の感じをさ……その……グループ名にしちゃったのかな……』
正直、男の子が泣くのを見たのは
高校野球、ぐらいだ。
だから戸惑い、あえて淡々。
『……それ……っすか。
……それはなんか……
それが母親との一番良い思い出だったから……みたいっす。
あんま世話とか……してもらってなかったみたいだし……海の旅行とかもその時、初めてつれてってもらったから……とか』
鼻水をすすり、
力丸君は頭をかいた。
『……そか。
つまりマザコンなんだ』
言うと力丸君は、
私をじいっと見た。
『…………何……?』
『……ぁ、え、いや、その、
そんな事思ってないくせにって……思いました。
ごめんなさい』
……そうだよ。
確かに思ってない。
でもここでグラついたら終わりだ。
森嶋悠斗は、
あの店を喧嘩して辞めちゃった、
ちょっと関わった、
人でなければならない。
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