朧月の夜 1

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で、何故白銀の彼が過去の死人の魂の行きどころを散策しているか。というと 天使の長から通達があったのである 「裁判にかけるはずの悪霊が届けられていない」と それもまあ、聞けば数十年前の悪霊で 正直、知ったこっちゃない!と叫び倒したいところだが 彼は魂を抜き取ることを専門とした団体の責任者であって、その生真面目から責任を投げ出すことも出来ず まして万が一こちら側の不手際だった場合 苦渋を噛むのは自分ではなく、自分の育て親なのだ 彼は親に泥を塗る行為はしたくないし、 何より弟分に鼻で笑われるようなことはしたくないという 生前からの癖で安いプライドを引きずっている そんな自分に気がつき、気を落ち着かせようと 柔らかく年季の入ったソファにいま深く腰掛ける そうだ、疲れてるのだろう 安いプライドなど抱えていて何になるのだ つまらない慢心は自分の身を滅ぼしかねない 自分の身だけならまだしも、他人を巻きこんで自爆することは愚かなことだ そう育て親に教わったではないか 自分は今、命を取り合う団体の責任者なのだぞ 届けられていないなら、何か問題があったかもしれない 無かったらあっちの不手際かもしれないし、その時多少なりとも文句を言っても許されるだろう この労働量ならば。 それは調べてみないとわからない ならば調べてみるしかない そう思いなおして再び文字の羅列に目を滑らすと コンコン、と細い指が書斎の扉を叩いた
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