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で、何故白銀の彼が過去の死人の魂の行きどころを散策しているか。というと
天使の長から通達があったのである
「裁判にかけるはずの悪霊が届けられていない」と
それもまあ、聞けば数十年前の悪霊で
正直、知ったこっちゃない!と叫び倒したいところだが
彼は魂を抜き取ることを専門とした団体の責任者であって、その生真面目から責任を投げ出すことも出来ず
まして万が一こちら側の不手際だった場合
苦渋を噛むのは自分ではなく、自分の育て親なのだ
彼は親に泥を塗る行為はしたくないし、
何より弟分に鼻で笑われるようなことはしたくないという
生前からの癖で安いプライドを引きずっている
そんな自分に気がつき、気を落ち着かせようと
柔らかく年季の入ったソファにいま深く腰掛ける
そうだ、疲れてるのだろう
安いプライドなど抱えていて何になるのだ
つまらない慢心は自分の身を滅ぼしかねない
自分の身だけならまだしも、他人を巻きこんで自爆することは愚かなことだ
そう育て親に教わったではないか
自分は今、命を取り合う団体の責任者なのだぞ
届けられていないなら、何か問題があったかもしれない
無かったらあっちの不手際かもしれないし、その時多少なりとも文句を言っても許されるだろう
この労働量ならば。
それは調べてみないとわからない
ならば調べてみるしかない
そう思いなおして再び文字の羅列に目を滑らすと
コンコン、と細い指が書斎の扉を叩いた
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