乱れ髪

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   何かに導かれるように、その名も知らぬ小さな駅に降り立った。  辺鄙(へんぴ)な駅に不平を溢しながら、傍らでベソをかいている美香に、紺碧の海の美しさを美点に挙げて(なだ)めた。  駅を出て、売店と泊まる所を探していると、突然の豪雨に見舞われ、急いで、近くにあった古びた一軒家の軒先に雨宿りした。  と、その時、 「あの……」  女の声が背後からして、咄嗟に振り向いた。  三十前後だろうか、明かりが漏れる硝子戸の隙間から顔を出していた。 「良かったら、入りやす」  女はそう言って手招きした。
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