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「少し、蒸しますな」
女はそう言って、はだけた浴衣の裾を直すと、障子を開けた。
庭を見た途端、俺は目を見張った。
そこにあったのは、庭一面に咲き乱れる、鞠大の白い牡丹だった。
燈籠の淡い光に、その白さを鮮明に浮かび上がらせていた。
「……見事だ」
俺は感嘆の声を漏らした。
「丹精込めましたさかい」
女はそう言いながら、団扇の風を俺の方に送っていた。
その風に合わせるかのように、牡丹に顔を向けている女の後れ毛が揺れていた。
俺は酩酊した目を、女の白い項に据えた。
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