プロローグ

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 シャトルが純白の閃光となり、コートの中心に突き刺さった。 瞬間、会場を震わせるほどの大歓声が響く。  二階の観客席では黒のユニフォームで統一した集団が、ある者は抱き合い、ある者は両手を上げて飛び跳ねながら、眼下のコートに向かい賞賛の声を送っている。そして、その隣では水色のユニフォームを着た集団が一様にうなだれていた。  一階にはおよそ二十ものコートが設置されている。高さ一、五メートルのネットがコートを二分し、卓球より広くテニスより狭いバドミントンコートの中で、一人の少年が大きくガッツポーズを取っていた。その全身は水を被ったようにびしょ濡れで、上で歓喜の声を上げている集団と同じ、黒で統一された格好をしている。強靭に鍛えられた四肢は大人顔負けだが、喜びを写し輝いている大きな目や赤く蒸気した顔からはどこか幼さが感じられる。  そしてそれとは対照的に、ネットを挟んで立ち尽くしている少年は少しだけその瞳を見開き、魂が抜けたかのように呆然としている。現実を理解できていない、というような表情だ。その後方には、相手の放ったスマッシュにより吹き飛ばされたシャトルが転がっている。うなだれている応援団とおそろいの水色のユニフォームからは汗が滴り落ち、先程まで行われていた試合の激しさがよく伺える。  数秒経過すると、少年はようやく体を動かした。左手にラケットを持ち替えると、ネットに向かって歩いていき、弾んだ表情をしている対戦相手と握手をする。互いに短い言葉を交わすと、相手は審判の下へ向かい、差し出された紙にサインをした。反対に水色のユニフォームを纏った少年はコートの横に置いてあるバッグの元へ向かい、大きなタオルで顔を拭った。その端麗な表情は悔しさに歪み、タオルで拭いたはずの頬をふた筋の水が流れ落ちる。頭上から降り注いでくるねぎらいの言葉が、少年の頭の中に反響していた。
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