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急速に狭くなる視界
なくなり始める音
『凛』
「………さ、…ん」
これで…終わり?
もう、もう、二度と
『凛』
貴方に呼ばれる事が嬉しい。貴方の目にうつるのが…嬉しい
『凛』
でもこのままじゃ、何も言えない
『凛』
何も聞けない
『凛』
何も、何も、…何も
――…それ、は、そんなの、は
「…いや、だ…!」
「っ!?」
力なんて出やしない。それでも無我夢中で振った手は何かに当たり、首にかかった手が離れた
「うっ…ごほっ…」
苦しさに喘ぎながらも、少しでも距離を取ろうと身を捩る。
「くっ、……はは、やってくれるよなぁ?」
眼鏡が飛んだらしいその頬から赤い血が伝い。ギラギラと睨み付ける眼差しに射ぬかれるようで震えが止まらない。
だけど。それでも
「………嫌だ…俺は、俺の居場所はここじゃ…ない…!」
あの場所に
殴られても
蹴られても
「ははっ、…やっぱり君は、いい目をしてるよ」
ゆっくりと立ち上がるこの男にだって、屈指はしない
何故なら
俺には
「迎えに来たよ、凛」
「凛ちゃん」
「凛」
大切な人がいるんだ
.
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