八月一日AM8:24

3/7
前へ
/37ページ
次へ
自分には縁がないと思っていたこの国へ入れたのだ。取材入国ですら手続きが膨大なこの国だからこそ、あまり情報が出回らない。気分的には異世界へ来訪したようだ。見るもの成すもの全てが新しい。それに好奇心に身を任せたほうが余計なことを考えずに済むため気が楽だった。 元々架空の魔法や超能力と呼ばれる超常現象を科学技術で体系化しようと建国されたのがこの国の起源であり、また存在意義である。ゆえにこの国は日本や世界中どこを探しても見たことがない技術の結晶であった。 筆頭に空中を滑走する車。 歩道の真上ではなく、道路に沿って車が走っている。渋滞緩和のためだろうか。この国は人口に比べて面積が小さい。ゆえに過密になると少年は思っていたのだが、そうでもない。勿論人の数は多いし、モノレールもひっきりなしに建物と建物の間を行きかいながら運行している。それでも想像していたよりは人、人、人、という印象はない。 「インフラが整ってるんだろうか。つーかおい、まだかよ」 「まだ」 少し立ち止まりそれだけ言うとまた歩き出してしまった。足に迷いがないため迷子ではないと思うが。実際のところはわからない。 せめて目的だけは聞き出してみようと、質問してみる。 「じゃあどこに行こうとしてんだ?」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加