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夏。
まだ日も上り始めの朝方だとはいえ、すでに少し暑い。夏の清涼な風か寝ている間にかいた汗と合間って、より清々しく感じられる。
寝返りを打つ。レンガの無遠慮な硬さが接地面を刺激する。どうにも寝付けなくてもう二、三度寝返りをうったとき、少年は異常に気付いた。
「俺、路上で寝てる……?」
独り言。それでも瞳を開けて確認しないのは、ありえない、という感情が勝っているからか。次第に意識も覚醒してくると周りの雑音が聞こえて来た。雑踏、国民共有のデータ放送。その中での少女の声。
「ちょっと、あんたこんなとこで何やってんの?」
「何って……」
目を開ける、と、そこには絶世の美女がいた。赤いチェックのスカート、反対に純白のワイシャツ。ネクタイのかわりに可愛らしいリボン。どこの制服だがわからないが、随分と派手だ。ブロンドの髪は真夏の日差しをうけて艶めかしく照り返し、大きな相貌はしかと少年を見据えていた。
しかしそれより驚くべき事案が一つ。
「なんで俺外で寝てんの!?」
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