八月一日AM7:42

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慌てて辺りを見渡して見る。行き交う、カバンを手に持つ会社員やジャージ姿の学生。果ては装ったカップルなどが奇異の目を少年に向けていた。自分の姿を確認してみるとパジャマである。そりゃ注意も引くよな、と恥ずかしさのあまり腕を交差して懸命に見せないよう努める。当然、意味などないが。 木漏れ日から覗く空を仰げば摩天楼のごとく会社や研究施設のオフィスが立ち上り、企業間を空中で繋ぐ空中回廊が少年に影を落としていた。 「あれは……見たことあるな。確か雑誌の特集でやってた擬似魔法を駆使した空中補完……?じゃあここは帝国ってことか?」 空中で交差し複雑に架かる回廊は、擬似魔法を使用した前衛アートだと少年が見た雑誌でそう紹介されていた。擬似魔法を扱う関係上、それは世界でいち早く擬似魔法体系化を目標に着手した帝国のみが実現できる技術だとも書かれていた。 「つまりここは帝国か?いやいやまてまて。なんで俺が俺と全く無関係な国に来ていてしかも路上で寝てなくちゃいけないんだ?」
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