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自慢ではないが、今まで波風たたない、ごくごく平和かつ温和な生活をしてきた。裏を返せば平凡、ということだ。
もちろん平凡というのは主観での感想である。難民で逃れてきたわけでも貧困で飢えに苦しんだわけでも、ましてや擬似魔法を駆使して帝国クエストをこなしてきた歴戦の擬似魔法師というわけでもない。つまるところ彼は魔法と関わらない生活を十六歳まで送ってきた。
こんな国とは無縁なのである。
「……迷子かなんか?」
それまで黙りを決め込んでいた少女が言った。眉根が上がりどことなく不機嫌そうである。実際は少年が必死に現状理解に努めている間に何度か質問していたのだが、現状理解に重きを置いていたので知覚出来なかったのだ。少年は知る由もないが。
「迷子っつーかなんだろ。……まあ迷子だな。スケールの大きい」
「ふうん?迷子ならぱーちゃんでなんとかなるわね。人垣が出来てるからなんだろーって思ったらただの迷子だなーー」
「あの、ちょっとすまん。ぱーちゃんってなんだ?」
少女の顔が驚愕でゆがむ。
「はあ!?ぱーちゃん知らないであんたそれでも帝国民!?」
すごい剣幕でまくしたてられたので二、三歩距離を取るため上半身だけ起こしたまま後退する。
「い、いや俺、帝国民じゃないし」
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