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「お蔭で俺はこの馬鹿猿と1年間、机を突き合わせなければならなくなった訳だ……」
「それはこっちの台詞だね。ま、海がまだ通路側なお蔭で、僕は窓側でゆっくり寝れるんだけど」
「平ヵ崎先生以外、他の先生たちは海くんの迫力に圧されて、極力近付いて来ないしね」
遥の言葉を引き継いだ遼の話に、陽菜たちは苦笑を浮かべてしまう。
入学式での一件以来、大半の教師は彼の恐持てな外見に恐れをなしていた。
「この腹黒猿……」
「使えるものは使わなきゃ損でしょ」
呆れた海の毒舌を、不敵に口角を上げた遥が余裕げに聞き流す。
そんな彼らのやり取りに、弁当箱を開けながら圭介と遼が乾いた笑みを浮かべてしまう。
「それ以前に、隣が男だろうと女だろうと、まともに授業を受ける気はゼロなんだな。遥は……」
「遥くんって、体育は全学年総合1位なのに、それ以外の科目は一切ヤル気出さないしねぇ」
ずば抜けた運動神経で、体育は全学年で1位。
所属する陸上部では、インターハイ記録保持者と好成績を挙げているのだが、それ以外は全くもって、彼のヤル気はゼロに等しい。
「それでも3年まで進級して来てんだから、肝心な所では勉強できるんだよな。こいつ」
「でも、赤点は多いよね。よく補習受けてるし」
「補習問題の方が楽だからだよ」
圭介と遼の素朴な疑問に、昼食の弁当を食べ始めていた遥が、なに食わぬ顔で応えた為、圭介たちだけじゃなく陽菜と美月まで絶句してしまう。
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