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放課後、それぞれの部活動を終え、一同はいつもの如く、海の家に集まっていた。
「……貴様ら、少しは人の家で遠慮する気はないのか」
和室6畳の彼の部屋には、総勢6人が集まり、各々、好き勝手に寛いでいる為、部屋の主である海がボヤくのは無理ないだろう。
「細かい事は気にしない、気にしない」
「良いじゃねーか。来週テストなんだし、テスト勉強したって」
テーブルに教科書とノートを広げた遼と圭介、そして陽菜は良い。
クッションに座ってスマホをいじってる美月も、まだ許そう。
問題は、人のベッドで、我が物顔でマンガ本を読んでいるこの馬鹿猿である。
「あ、海。この本の2巻ってないのー?本棚に入ってなかったけ…ウキャッ!?」
図々しい遥の顔面めがけ、ぶっとい青筋を浮かべた海が、英和辞典を投げつけた。
「~っ痛。なにすんだよ、行きなりーーっ!!」
「貴様の馬鹿顔がムカついたからに決まってるだろっ」
顔に辞典の角の痣を作った遥が、すかさず噛みつき、目付きを悪くした海も低い声音で凄むが、そんな彼らを陽菜が笑顔で宥めに入る。
「まぁまぁ、海も遥も落ち着きなって。あまり騒ぐと皐月さんに悪いでしょ」
それにと、にこやかに微笑んだ陽菜が話を続けるが、既に海はその笑顔でKOされていた。
「みんなで集まった方が楽しいし……って、あれ、海どうしたの?」
「……っ」
撃沈した彼を陽菜が不思議そうに覗き込むが、昔からこの笑顔には弱いのだと、深い溜め息を漏らした海が降参する。
「解ったよ……。好きにしてくれ……」
「あらら、尻に敷かれてるわねぇ~、海くん?」
からかう美月を睨むが、本当の事なので、それ以上、返す言葉がなかった。
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