30人が本棚に入れています
本棚に追加
「可愛い後輩さんですね」
「うん、素直で良い子だよ」
二人っきりになった梓が言い、小さく微笑んだ遥が応えるが、すぐにその笑顔が曇る。
そして、此方の意図を察し、余計な事を言わないでいてくれた彼女に、感謝の言葉を口にした。
「さっきは、ありがとうね。梓ちゃん」
そんな彼の言葉に、梓は小さく息を漏らした後、応えた。
「もともと、私が美月お姉をからかい過ぎたのが原因なので、遥くんは気にしないで良いですよ」
それよりと、真面目な表情になった梓が言葉を続ける。
「遥くんと美月お姉の関係。どうゆう事情かは突っ込みませんけど、ちょっと美月お姉に対して、気を遣い過ぎてません? 」
「……気付いてたんだね」
「お二人を見ていれば解りますよ。いくら片想いの相手だからって、遥くんが気を遣って、自分を押し殺す事ないんじゃないですか? 」
梓の鋭い指摘に、遥は一言だけ「うん」と呟くしかなかった。
解っている。
自分の甘さも、弱さも。
美月が好きで、彼女に少しでも必要とされたくて、どうすれば必要としてもらえるか、馬鹿みたいに必死になって、考えている自分がいる事も。
「あ、あの遥くん?! ごめんなさい、言い過ぎましたよね?! 」
黙りこみ、俯いてしまった彼の様子に、梓が慌てて声をかけるが、そんな彼の後頭部を小突いた人物がいた。
最初のコメントを投稿しよう!