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同じく朝練帰りの海である。
一緒に、遼と圭介の姿もあった。
「何してんだ……」
「海」
様子のおかしい自分に気付き、怪訝な顔を向ける海に、遥は笑顔を浮かべ応える。
「なんでもないよ、大丈夫」
そう応えてたみたものの、やはり海には通用しないのか、怪訝な表情のままだ。
そんな彼の様子に、遥が困ったように笑顔がひきつらせてしまう。
だが、遥の心情を見抜いたのか、海はおもむろに彼の左頬を引っ張った。
「あだだだっ!! 」
予想外の行動に、遥は勿論、傍にいた梓と遼、圭介も唖然としてしまう。
だが、呆れたように、溜め息を漏らした海が手を離すと、小さく言葉を漏らす。
「この馬鹿猿が……」
なんとなく、美月関連で何かあったと悟った海が、そう呆れた言葉をぼやく。
そんな風に落ち込むくらいなら、もっと自分の本能に忠実になれば良いんだと、海は内心で愚痴を溢してしまう。
遥と美月の関係は、昔から見ていても危うく、とても微笑ましいとは言えなかった。
(どっちかに依存するだけの関係は、いつか捻れるぞ)
そうなった時の彼を按じて、海は無言のまま、遥の頭を撫でる。
そんな彼の態度に、遥は不思議そうに首を傾げるが、すぐに無邪気に笑う。
そこへ、その場の空気を変えるように、陽菜が声をかけた。
「おはよう、みんな」
「陽菜、遅かったな」
笑顔で手を振り、駆け寄って来た陽菜の存在に、気付いた海が怪訝げに声を返した。
だが、そんな彼女に手を引かれて、共に走って来た静流の姿に、梓以外の全員が、驚いた表情を見せた。
「皆はん、お久しぶりです!! 」
夏の制服に身を包んだ静流が、久方ぶりに顔を合わせた友人たちへ、屈託ない笑顔を見せた。
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