第12話

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そんな彼女の背後に迫った彼が、油断していた静流の小柄な身体を持ち上げ、狂喜乱舞する。 「相変わらず静流ちゃんは、小さくて可愛いねぇ~!! 」 「みぃーーっ?! 」 不意打ちでくらった遼からの熱烈な歓迎に、静流は再び猫みたいな声を上げた。 「2ヶ月ぶりだねぇ~。やっぱ、静流ちゃんはこの小ささが調度良いよ。ほーら、たかいたかーい!! 」 気持ち悪いくらいに、締まりのない顔をした遼が、完全に彼女を子供扱いする。 その瞬間、ぶっとく青筋を浮かべた静流が奇声をあげて豹変した。 「ふぉわっちゃーーっ!! 」 「ぐふぅっ!! 」 奇妙な雄叫びと共に、抱き上げられた体勢から、遼の鳩尾めがけ、鋭い蹴りをお見舞いした静流が、彼から離れた。 そして、怪しく眼を光らせた彼女は、その場にうずくまり呻く遼へ言い放つ。 「うちを前にして、小さい、子供、小学生と抜かした輩は、誰やろうと死あるのみっ!! 」 身長135㎝がコンプレックスな静流を、身長ネタでからかうのは命取り。 憐れな遼は未だに鳩尾を押さえ、野太い呻き声を漏らしている。 「本当に相変わらずだな、静流。少しは大人しくなったかと思えば……」 「海に言われたくありまへんわーっ!! 」 復帰早々、暴れる彼女に海が呆れてしまうが、ぶんぶんと短い手を振り回した静流が言い返す。 だが、やっぱり身長差60㎝の彼にはかすりもしない。 一方、彼女とは初対面の梓が、会話に入れずにいた為、気付いた遥が紹介する。 「ああ、ごめん。梓ちゃん、紹介するね。彼女は銀 静流ちゃん。僕らと同じクラスで女子空手部の主将さんなんだ」 「でも、今までいませんでしたよね? 」 遥の説明に首を傾げた梓が疑問に思う。 転入して2週間足らずだが、静流とは一度も顔を会わせた事がない。 そんな彼女へ、苦笑を浮かべた遥が説明を続けた。 「暴漢退治をちょっとやり過ぎちゃってね、2ヶ月間の停学処分を受けて、ずっと実家の京都に戻ってたんだ」 「空手有段者で、舞踊のプロ級。黙ってれば大和撫子美人なのに、中身がアレだからね~」 「みぃっ!! 陽菜酷いですぅっ!! 」 遥に続いた陽菜の紹介の仕方に、思わず静流が叫ぶが、本当の事でしょうと、彼女は肩を竦め笑う。
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