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そんな静流の近くに寄った梓が、にこやかな挨拶を向ける。
「はじめまして、銀さん」
「みっ?! 」
初対面の美月そっくりの梓に、静流は暫し呆然としてしまうが、すかさず陽菜が紹介に入る。
「ほら、昨日話したじゃんか。美月の従姉妹で転入生の桐生 梓ちゃんだよ」
「ああ、例の! 」
納得した静流が、思い出したように掌を打ち、改めて梓と挨拶を交わす。
「お初にお目にかかります。静 静流言いますわ。同いクラスやし、よろしく頼みますぇ」
「桐生 梓です。此方こそ、よろしくお願いしますね」
そんな、和やかな挨拶を交わす彼女たちを見守っていた遥が、そう言えばと、苦笑を浮かべ告げた。
「これでまた、静流ちゃんファンクラブの人たちが、騒がしくなるね」
「あー、あの静流大好きの、こゆ~い人たちか……」
遥の言葉に続いた陽菜が、何故か静流から顔を反らした。
「み、みぃ、なんで顔反らすんどす、陽菜? 」
「確か、ファンクラブの人って、制服のジャケット裏に、静流命って縫いつけてるんだっけ……」
まるで怖い話をするような調子で語る遥の言う通り、聖華高校一部の男子生徒の間では、静流崇拝が繰り広げられていた。
「他にも、お菓子は静流ちゃんの好きな和菓子しか食べちゃいけなかったり、静流ちゃんの私物は、1つ5万からオークションで落札されるとか……」
「みぃぃーーっ!! なんなんですか、それはーっ!! 」
とんでもないファンクラブの所業に、静流が思わず青ざめ叫ぶ。
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