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彼らが通う倉妓市立聖華高校は、倉妓駅の目の前に建っている為、駅前は登校してくる生徒で溢れていた。
聖華高校は倉妓市内以外に、遥たちの暮らす細波町、そして雛菊町(ヒナギクチョウ)と言う細波町の隣町。
これら3つの市と町の学生が通う故、生徒数は意外と多い。
「よ、遥、海」
下駄箱の前で明るく声をかけて来たのは、跳ねたオレンジ色の派手な髪が、粗野な印象を見せる愛子原 圭介(アヤシバラ ケイスケ)18歳。
同じクラスで、小学校の頃からの友人だった。
そして同じく、彼らの姿を見つけた2人の女生徒も駆け寄って来る。
「おはよ、3人共!」
外跳ねの癖毛をセミロングにした、明るく元気なのが松島 陽菜(マツシマ ヒナ)17歳。
「おはよう……」
そして、腰までの天然パーマをポニーテールにした彼女が、壬生 美月(ミブ ミツキ)17歳。
2人とも遥、海の小学校入学からの幼馴染みで、親友同士でもあった。
「おはよう、美月ちゃん」
「え、ええ、おはよう……」
優しい表情で挨拶した遥に、美月は少し照れながら応えた。
そんな彼らの様子に、圭介と陽菜が呆れてしまう。
「遥の奴、私なんてガン無視で美月に一直線なんだけど……」
「仕方ねーよ。あいつ、美月ラブだし」
美月を見やる眼が完全に好きだと言ってる遥は、子供の頃から彼女に片想い中である。
しかし美月は、同年代よりグラマーな体型と派手だが美人系な顔立ちにより、男子からの人気は高く、ファンクラブに入ってる輩も多い。
「ライバルが多い相手だよな、遥は」
苦笑まじりに肩を竦めた圭介の言葉通り、タイミング良く美月ファンの男子が、彼女に声を掛けて来た。
「よー、壬生。今日の放課後、一緒にカラオケ行こ……ぐはぁっ!!」
だが、駆け寄って来た男子の足に、自分の足をワザと引っ掛けた遥が、男子生徒を盛大に転倒させる。
打ち所が悪かったらしく、美月ファンの彼は既に気絶していた。
「あ、ごめん。足が引っ掛かったみたいだね」
「は、はは遥くん……!?いい今、ワザと足……!?」
「事故だよ」
慌てる彼女を人畜無害な笑顔で誤魔化した遥の姿に、海たちはデッカイ溜め息を漏らしてしまう。
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