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可愛い系な顔して、あの笑顔が胡散臭い。
「遥の美月好きには困るね、あれは」
「猿のくせに色ボケやがって……」
苦笑した陽菜に、海が仕方なさそうにうなだれてしまうが、そんな彼らに圭介が呆れがちにボヤく。
「お前らも人の事は言えないだろーが。見ろ、あの女子のピンクな視線を……」
そう言った彼の示す方向には、うっとり顔の女子生徒たちがいた。
「「きゃーっ!!こっち見たぁ~!」」
「海くーん!!」
「良いなぁ、陽菜~!」
「……うぅ、視線が痛いなぁ~」
海に向けられるピンクな視線とは別に、陽菜に刺さる視線はちょっと痛い。
そんな彼女に、美月が仕方なさそうに笑う。
「なんせ、女子のアイドルの海くんの彼女なんだから、仕方ないわよ、陽菜ちゃん」
「それはそうなんだけど~」
苦笑まじりにボヤいた陽菜だが、彼女と海は、6年前から付き合っているのだ。
一時期、陽菜が中学入学と同時に東京へ引っ越ししてしまう事もあったが、中学3年の時、再び細波町に戻って来た。
「 もっとも、陽菜ちゃんの嫌味ない性格が幸いして、ドロドロの昼ドラ展開はなかったけどね」
「あはは、美月ちゃんだったら間違いなく、昼ドラ並みの嫌がらせの嵐だったね」
「……っそ、それはどうゆう意味、遥くん……」
爽やかな笑顔でなかなかの毒を吐いた彼に、美月は泣きたくなってしまう。
確かに、同性から好かれる陽菜とは反対に、異性からは好かれるが、同性からは目の敵にされてしまった美月である。
「仕方ないよ、人より見た目が良い人は、周り、特に同性からは妬まれ易いし」
肩を竦めた遥が、まぁ、でもと、隣にいた海を覗き込み告げた。
「海の場合、男からも別の意味で人気だしねぇ~」
「確かに、番長だしな」
遥の言葉に頷いた圭介も、会話に加わった為、海が眉間に皺を寄せボヤく。
「番長言うな、古臭い」
「だって海、この学校の不良の中で一番強いじゃん。昔から喧嘩も強かったしー」
「入学式で上級生に喧嘩売られて返り討ちにした挙げ句、便乗して来た他の生徒までボコボコにしたのはお前くらいだ」
彼の武勇伝を語る圭介に、確かにと、陽菜たちも当時を思い出す。
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