30人が本棚に入れています
本棚に追加
「凄かったよねー、あの時。最終的に2、30人での大乱闘だったもん。しかも校庭のど真ん中でだったから、全校生徒が目撃してたしさー」
「先生たちが慌てて来たけど、手に負えなくて……。ほら、3年の人たちなんて、野次馬の人にまで絡んで……あら?」
ふと、話を止めた美月が、陽菜や圭介と顔を見合わせた。
「あたし、思い出したんだけど。あの時、便乗して来た人たちをボコボコにしたのって……、海くんじゃなくて……」
「……ああ、そうだったな」
表情をひきつらせた美月と圭介が、人畜無害な顔で笑う遥を見やる。
そして、当時の恨みを思い出した海が、低~い声で、真実を口にした。
「最初に喧嘩売って来た奴らを返り討ちにしたのは俺だが、その後に絡んで来た奴らの大半をタコ殴りにしたのは、この馬鹿猿だっ!」
「あれ~、そうだったけ~?覚えてないなぁ、そんな事~」
詰め寄る彼を胡散臭い笑顔でかわした遥だったが、次の瞬間、思いっきり胸ぐらを掴まれ凄まれる。
「惚けるなよ、馬鹿猿が。貴様、タコ殴りにするだけして、教師たちが来た途端、一番に逃げただろうがっ」
もちろん、海も素早く逃げたが、遥の逃げっぷりは最早、神業と言って良いほどの素早さだった。
「あー……確か、あの時のこいつ、教師の姿が見えた瞬間に、胸ぐら掴んでた奴を蹴り飛ばして、一目散に逃げてたっけ……」
「正に駿足……」
「さすが陸上部界のエース。でも、ある意味せこい」
大きな溜め息を漏らした圭介、陽菜、美月のボヤきを、遥は明後日の方向を向きながら口笛を吹いてかわしていた。
「ま、海くんも海くんで、あれ以来、すっかり不良たちになつかれちゃったわよね」
少しにやついた笑みでからかった美月に、海が眉を寄せてしまうが、再び彼の話題に戻った圭介が話を繋ぐ。
最初のコメントを投稿しよう!