第1話

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「凄かったよねー、あの時。最終的に2、30人での大乱闘だったもん。しかも校庭のど真ん中でだったから、全校生徒が目撃してたしさー」 「先生たちが慌てて来たけど、手に負えなくて……。ほら、3年の人たちなんて、野次馬の人にまで絡んで……あら?」 ふと、話を止めた美月が、陽菜や圭介と顔を見合わせた。 「あたし、思い出したんだけど。あの時、便乗して来た人たちをボコボコにしたのって……、海くんじゃなくて……」 「……ああ、そうだったな」 表情をひきつらせた美月と圭介が、人畜無害な顔で笑う遥を見やる。 そして、当時の恨みを思い出した海が、低~い声で、真実を口にした。 「最初に喧嘩売って来た奴らを返り討ちにしたのは俺だが、その後に絡んで来た奴らの大半をタコ殴りにしたのは、この馬鹿猿だっ!」 「あれ~、そうだったけ~?覚えてないなぁ、そんな事~」 詰め寄る彼を胡散臭い笑顔でかわした遥だったが、次の瞬間、思いっきり胸ぐらを掴まれ凄まれる。 「惚けるなよ、馬鹿猿が。貴様、タコ殴りにするだけして、教師たちが来た途端、一番に逃げただろうがっ」 もちろん、海も素早く逃げたが、遥の逃げっぷりは最早、神業と言って良いほどの素早さだった。 「あー……確か、あの時のこいつ、教師の姿が見えた瞬間に、胸ぐら掴んでた奴を蹴り飛ばして、一目散に逃げてたっけ……」 「正に駿足……」 「さすが陸上部界のエース。でも、ある意味せこい」 大きな溜め息を漏らした圭介、陽菜、美月のボヤきを、遥は明後日の方向を向きながら口笛を吹いてかわしていた。 「ま、海くんも海くんで、あれ以来、すっかり不良たちになつかれちゃったわよね」 少しにやついた笑みでからかった美月に、海が眉を寄せてしまうが、再び彼の話題に戻った圭介が話を繋ぐ。
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