第一章 君のいる場所へ

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「え、え、何? どういう……⁉︎」  私の中のパニックは既にピークに達していた。  死んだと思ったのに生きていたり、見知らぬ場所に立っていたり。  もうわけが分からない。 「あ? 女子(おなご)かぁ?」  突如聞こえた声に体を揺らし、慌てて振り返る。  が、振り返ったポーズのまま固まってしまった。  どこにツッコミを入れたらいいのか。  どこか分からない山の中で、運良く人に会えたことは幸運なのかもしれない。  だけど、この人たちのファッションはさすがにない。いくら江戸時代大好きな私でも。  そこにいたのは、三人の男だった。  三人ともボサボサになった(まげ)がついた頭で、そのうちの二人は月代(さかやき)(真ん中だけ剃り上げて髷がついている、よくあるお侍さんヘアー)を入れている。  はだけた着物を着ており、腰には刀のようなものをさしている。  様子と臭いから判断して酔っ払いだろう。  今時完璧な侍風のファッションでナンパとか……何も言えない。  ハロウィン先取りの方達だろうか。
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