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「な……なんなの……一体……」
本物の刀なんて銃刀法違反でしょ、なんて言う余裕もなかった。
初めて見た本物の刀……
本当に死ぬかと思った……
「あんた大丈夫か? 怖かっただろ?」
この人は大丈夫だ、危険じゃない。
何故かそれがはっきりと分かった。
ほっとしたら一気に力が抜けて、座ったまま立つことも出来なくなった。
「……お、おい、大丈夫か?」
「え……?」
気づくと頬に涙が流れ落ちていた。
力が入らなくて止めることも出来ない。
「ったく……しょーがねぇなぁ」
男の人は可笑しそうに笑いながら私を軽く抱きしめた。
「怖かったな……もう大丈夫だ」
「うっ……うぇっ……」
私はしゃくりあげながら泣いた。
自分が何処にいるのか分からない。
何が起こったのか理解出来ない。
そんな中襲われかけている。
いくつもの不安に気づかないふりをしていたが、気づいてしまうと涙は止まってくれなかった。
私……こわかったんだ……。
泣き続ける私の頭をその人は優しく撫でてくれた。
大きくてしっかりした身体。
そんな身体に似合わない優しさがなんだか可笑しかった。
抱きしめられていると不思議とほっとする。
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