第一章 君のいる場所へ

13/66
前へ
/174ページ
次へ
 私はしばらく泣いた後、ようやく落ち着き小さく鼻をすすった。  どれくらい泣いていたんだろうか。でも、沢山泣いて、少しスッキリした気がする。 「助けてくださってありがとうございました」  私が深々と頭を下げると、彼は満足そうに笑った。 「おぅ、気にすんな」  お礼を述べたことだし帰ろう、として大切なことにようやく気づいた。 「あの……」 「なんだ?」 「ここ……どこですか……?」  自分はどうしてここにいるのだろう。  確か学校帰りに踏切で……。 「ここ? 江戸の外れだ」 「……江戸?」  この人は何を言っているのだろう。 「江戸……って東京ですか? ……そんな馬鹿な……冗談でしょ? だって、私が住んでるの田舎ですよ」 「とうきょ……? お前……大丈夫か?」  服装と言い、江戸と言い……まさかあるわけないけれど……まさか……。 「つかぬことをお尋ねしますが、今は何年何月何日でしょうか?」 「え? あぁっといつだったかなあ……おそらく文久(ぶんきゅう)二年(うるう)八月あたりだろ」 「文久……」  閏八月と言うと、おそらく現代で言う10月あたりだろう。  夏服の制服だと少し涼しすぎる季節。 「うそ……」  文久2年……西暦で言うと1862年。  つまり私は  何故か江戸時代に迷い込んでしまったのだ。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

182人が本棚に入れています
本棚に追加